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2024/09/02
量子生命情報薬学分野(化学薬学領域)
狙ったRNAは逃さない! -抗がん活性を持つDMDA-PatAの作用メカニズムを解明-
量子生命情報薬学分野の福澤薫教授、半田佑磨特別研究学生(研究当時)は、理化学研究所・開拓研究本部岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎信太郎主任研究員、斉藤大寛大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時)らの国際共同研究グループと連携して、抗がん活性を示す小分子化合物「desmethyl, desamino pateamine A(DMDA-PatA)」の作用メカニズムを解明しました。その結果、DMDA-PatAは標的であるRNA結合タンパク質 eIF4A およびDDX3 に新たなRNA配列特異性を与える化合物であることが分かりました。本研究成果は、今後DMDA-PatAを基にした抗がん剤設計を支援すると期待されます。
がん治療の手法として抗がん剤の使用は主要な方法の一つですが、重い副作用が問題点として挙げられます。DMDA-PatAは、一部のがん細胞に高い毒性を示す反面、通常細胞には毒性が低いことが報告されており、この細胞特異的な毒性は抗がん剤の重い副作用を回避できる可能性を秘めています。DMDA-PatAは遺伝子発現のうち翻訳のプロセスを阻害することが報告されていましたが、その分子的な作用機序は未解明でした。今回の研究で、DMDA-PatAは翻訳に関わるタンパク質eIF4AとDDX3をメッセンジャーRNA(mRNA)上の特定の配列(GNGモチーフ。Gはグアニン塩基、Nは任意の塩基)に強固に結合させ、翻訳開始点を探す走査リボソーム進行の立体障害物となることによってmRNAの翻訳を選択的に抑制することを発見しました。
本研究は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(9月2日付:日本時間9月2日)に掲載されました。