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2025/04/14

研究

【論文掲載】薬品製造化学分野の西尾幸也博士(研究当時 博士後期課程在籍)、鹿又喬平助教らの論文がACS Catalysisに掲載されました

医薬品の多くはキラル(光学活性)な化合物であり、右手型と左手型(エナンチオマー)では多くの場合に全く異なる薬理活性を示します。そのため、両者を高選択的に作り分ける方法論の開発は創薬研究における極めて重要な課題です。非常に高い選択性を示す酵素は、キラルな化合物の合成に汎用されていますが、一つの酵素では一方のエナンチオマーしか得ることができません。
 今回、西尾幸也博士、鹿又喬平助教、赤井周司教授の研究チームは、加水分解酵素リパーゼを用いて、同じ酵素と同じ出発物質から、右手型と左手型の化合物を、ほぼ100%の変換率で作り分ける方法を開発しました。本来 R体選択性を示す天然リパーゼを用い、さらに2つの反応を同時に組み合わせることで、S体生成物を生じることに初めて成功し、上記の作り分けが可能になりました。このように複数の反応を同一系内で行う際、反応どうしが干渉して目的の生成物を得ることは難しいですが、本研究では、ナノ粒子の乳化作用により形成されるピッカリングエマルション中で反応を行い、3つの反応を空間的に隔離することで、それらの共存を実現しました。これは、細胞内で起こっている複雑な化学反応の過程を人工的に模倣したシステムとも言えます。
 一つの出発物質から、一つの触媒で右手型と左手型の化合物の作り分けを実現した本法のコンセプトは、有機触媒などの人工触媒にも適用可能な応用性の高い方法として高く評価されました。今後、医薬品の開発研究や製造への貢献が期待されます。

本研究成果はアメリカ化学会の論文誌「ACS Catalysis」に2025年4月7日付けでオンライン公開されました。

雑誌名:ACS Catalysis
論文名:(S)-Convergent Deracemization of Racemic Esters with (R)-Selective Lipase: Pickering Emulsion Strategy for Enantiodivergent Synthesis Using a Native Enzyme
著者:Tomoya Nishio#, Shuji Akai*, and Kyohei Kanomata*
#筆頭著者 *責任著者