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2024/04/08

研究

【論文掲載】再生適応学分野(分野主任 深田 宗一朗教授) 張 礫丹特任研究員、斉藤 隼人大学院生(当時)らの論文が米国科学誌 Cell Reports に掲載されました。

筋肉には、外傷や肉離れなどにより損傷をうけても再生する能力があります。この能力は筋肉固有の幹細胞であるサテライト細胞のおかげです。しかし、サテライト細胞だけでは不十分で、他の臓器や組織の修復同様に筋再生過程でも時空間的に秩序だった免疫細胞などの助けが必要です。近年のシングルセルRNAシークエンシング技術などにより、再生過程における細胞の入れ替わりや、サテライト細胞を中心とした細胞間コミュニケーションの解析が飛躍的にすすんでいます。
一方で、筋肉には再生以外にも、内・外的な様々な要因に適応する能力もあります。よく知られている適応の一つが筋トレに代表されるように鍛えることで大きくなる筋肥大です。筋再生研究と比較して、筋肥大時の細胞間のコミュニケーションはほとんどわかっていませんでしたが、深田宗一朗教授らのグループは筋肉の間質に存在する間葉系前駆細胞が筋肥大時のサテライト細胞の増殖に必須であることをこれまで発見してきました(Cell Stem Cell 2022)。今回は、その続報として、肥大筋を用いたシングルセルRNAシークエンシング解析や細胞間相互作用予測ツールなどを駆使することで、これまで報告した間葉系前駆細胞による直接的なサテライト細胞の制御に加えて、間葉系前駆細胞が免疫細胞の一種であるマクロファージのリクルートに必須であることを明らかにしました。さらにマクロファージが分泌するグラニュリンという分泌タンパク質がサテライト細胞に直接作用することで、サテライト細胞の増殖状態を維持していることも明らかにしました。サテライト細胞は筋ジストロフィーのような筋肉が損傷する疾患に対しては治療標的になり得ますが、加齢性筋萎縮のような筋損傷がほとんど起きない萎縮性の疾患に対してはサテライト細胞の利用は、現状では現実的ではありません。しかし、今回の成果のように筋肉が損傷しない状態での筋サテライト細胞の増殖の解明は、萎縮性筋疾患に対して新しいアプローチを提案するものであり、サテライト細胞による萎縮性筋疾患治療法開発につながることが期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「Cell Reports(セルレポーツ)」のオンラインに、4月3日(水)に公開されました。

なお、本研究は本学情報科学研究科、微生物病研究所、 九州大学との共同研究として行われました。

雑誌名:Cell Reports
論文名:Regulation of Muscle Hypertrophy through Granulin: Relayed Communication among Mesenchymal Progenitors, Macrophages, and Satellite Cells
著者:Lidan Zhang*, Hayato Saito*, Tatsuyoshi Higashimoto, Takayuki Kaji, Ayasa Nakamura, Kanako Iwamori, Ryoko Nagano, Daisuke Motooka, Daisuke Okuzaki, Akiyoshi Uezumi, Shigeto Seno, and So-ichiro Fukada (*equal contributed)