薬品製造化学分野では有機合成を基盤とした「モノづくり」を専門としており、世の中にない新規物質の合成や反応開発を研究しています。
重水素(2H, D)は水素(1H)の安定同位体であり、C-H(炭素-水素)結合よりC-D(炭素-重水素)結合の方が安定であるという性質があります。近年、医薬品に重水素を組み込んだ重医薬品（デュークラバシチニブ; 2022年承認）や、生体のイメージング等に利用できる重水素を導入したマーカーなどが注目されています。そのため、有機分子に重水素を組み込む技術が大切になってきます。
ポリエチレングリコール（PEG）は、医薬品関連物質や化粧品に多く利用される機能性物質であります。しかし、PEGのC-H結合をC-D結合に変換することは非常に困難です。今回、可視光および光触媒を用いて穏和な条件下、PEG類に重水素を組み込む技術を開発しました。これは多様な科学の発展に貢献できる反応として評価され、本学会にて受賞に至りました。