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学生インタビュー

米国の医薬品メーカーに研究留学
核酸医薬でひとつの成果を得ると共に
異文化に触れて人間的にも成長

薬学研究科 博士後期課程 創成薬学専攻(2年)

三上 敦士 さん

所属・学年は 2022/8 現在の情報です

■大阪大学薬学部を選んだ理由

自然科学をまんべんなく学べるのが薬学

なぜ薬学部に?と聞かれたときの私の正直な答えは「勉強したかったから」。高校生のときに自然科学をまんべんなく学べる学部はどこだろうと調べてみると、化学や生物学、物理学や統計学など幅広く触れられるのが薬学でした。薬をつくるには有機合成化学が必要で、それを生体内に投与すると生物学の知識が求められ、効果を解析するためには物理学とか統計学が必要になる。薬学はサイエンスがあふれていておもしろいと感じました。
私が大学に求めていたのは勉強に没頭できる環境であり、サイエンスを学べる先生がいることです。学部時代を通じてこれまで、必修科目以外にもサル学や脳科学、プログラミングなど興味をもったことには貪欲に挑戦してきました。成績が伴っていたかどうかは別にして自分なりによく勉強してきたなと思います。

■博士課程に進学した理由

核酸医薬の研究継続と刺激的な環境を求めて

化学にも生物学にも物理学にも関わる「核酸医薬」を授業で知って、この研究をしたいと思いました。
DNA や RNA は遺伝情報の貯蔵や情報の伝達、タンパク質合成などの役割を担っています。一般に核酸医薬は、数十塩基ほど連結された化学合成オリゴ核酸であり、標的のDNAやmRNAに作用することでタンパク質の産生を抑制するものです。遺伝子変異に起因するような難治性疾患を治療できる次世代医薬品として期待されています。
博士課程進学にあたっては迷いもあったのですが、やはりこの研究をもっと続けたい、もっと勉強したいという思いで決めました。博士課程に行かなくても勉強はできると考えたこともあるのですが、刺激を与えてくれる人、気付きを与えてくれる議論ができる人がいる点でこれ以上勉強に向いている場所はありません。


■成長や達成感を感じたエピソード

がむしゃらにチャレンジできた米国留学

学部4年生の途中から米国の医薬品メーカーに研究員として2年ほど留学しました。留学生歓迎パーティで全然話せなかったことが悔しくて英語を勉強するようになったのがきっかけです。今思えば無謀な留学だったのですが、知らないからこそがむしゃらにチャレンジできた面もあり、結果的にとてもいい経験になりました。
研究内容は日本と変わらず核酸医薬で、トライした化学的修飾のひとつが核酸医薬の課題である生体内安定性を高めることに成功し、その成果を国際学会で発表。優秀ポスター賞を受賞することができました。ラッキーが重なった成果でしたが、それを緊張することなくプレゼンできたのがよかったと思います。
留学では、人種も国籍も、文化も宗教も異なる人たちと接することで、多様な考え方があることを体感として学ぶことができました。一歩引いて俯瞰する、自分の考えに固執しない、そんなスタンスが身につき、人間的にも成長できたと思います。

■現在取り組んでいる研究

効率的に多種類の核酸医薬を合成できる化学反応の開発

医薬品にはメリットとデメリットがあり、どんな薬にも副作用があります。核酸医薬にも副作用があるのですが、副作用を少なくするには多くの実験や検証が必要です。しかし、例えば試したいものが100個あり、1個つくるのに1年かかるとするとトータル100年もかかることになります。そこで私は現在、その100個をもっと効率的につくれるようにするための化学反応の開発を行っています。
反応の再現性がとれなかったり、反応効率が想定以上に低かったりと実験はうまくいかないことの方が多く、トライ&エラーを繰り返すしかありません。しかし私はうまくいかないことも含めて試行錯誤すること自体が面白く、楽しいと感じています。

■将来目指しているもの

サイエンティフィックな仕事で面白い人生を送りたい

博士課程修了後の道はまだ決まっていません。現時点で言えるのは、サイエンティフィックに携われる仕事をしていきたいということと、人との比較でなく自分の価値観で面白い人生を送れればいいということ。創薬を目指して研究を続ける道もあるし、研究から離れて医薬品行政に携わる仕事も面白いかもしれません。
私は世の中の疑問や課題に興味を持って、自分で勉強したり工夫したりしながら何か意味のあるものをつくっていきたいです。サイエンティフィックな素材や題材であれば楽しんで自分らしさを発揮できると思います。

留学中のマイルールとして、遊びに誘われたら絶対に断らないと決めていました。日本だったら絶対に行かないようなクラブに一歩足を踏み入れると、そこにはアメリカ映画のワンシーンが広がっていてちょっと感動しました。逆に日本の文化を知ってほしくて折り紙を教えたり、だし巻き卵や肉じゃがの作り方を教えたりもしましたが、アメリカ人の不器用さにはびっくりしました(笑)。

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