薬学研究科では、在籍する大学院生等に対し、
将来を担う若き研究者として国際的な場での経験を積ませるため、
海外における研究や国際学会での発表に関わる経費の支援を行っています。
元山 直人
情報・計量薬学分野
博士前期課程2年(当時)
アメリカ・ダラス
2017年12月5日 ~ 2017年12月10日
■目的
The 18th I18th international Conference on Medicinal Chemistry & CADDで研究ポスター発表を行う。

■発表論文あるいは共同研究の題目と概要
【題目】Interaction analysis of MDM2 inhibitor by fragment molecular orbital method

【概要】がん抑制タンパク質であるp53の抑制タンパク質として働くMDM2の阻害薬について、さらなる有益な情報を得ることを目的として、フラグメント分子軌道 (FMO)法を用いて、分子間相互作用計算を行った。

■海外派遣で得られた成果
多くの口頭・ポスター発表の聴講を通して、自身の研究に対する有益な知見を得ることができた。また、自身のポスターはBest Poster Awardを受賞することができた。

小垣 考弘
細胞生理学分野
博士課程前期2年(当時)
アメリカ・フィラデルフィア
2017年12月1日~2017年12月8日
■目的
ASCB EMBO 2017 meeting にてポスター発表を行い、自分の研究に対して第三者とのディスカッションの場を持つことで、研究へのヒントを得る。また、世界の最先端の研究や研究現場で働く人と交流の場を得る。

■発表論文あるいは共同研究の題目と概要
【題目】TP53 gene status is a critical determinant of phenotypes induced by ALKBH3 knockdown in non-small cell lung cancers.

【概要】ALKBH3は非小細胞肺癌において高発現しているタンパク質であり、ALKBH3高発現患者の無再発生存率は低いことが明らかになっている。よってALKBH3が非小細胞肺癌の革新的治療標的になる可能性がある。ALKBH3発現抑制により増殖能の抑制が引き起こされることは報告されているが、詳細なメカニズムは明らかとなっていない。本研究では、ALKBH3発現抑制によりDNAの二本鎖および一本鎖切断が引き起こされることをウエスタンブロット法により明らかとした。また、TP53遺伝子の状態がALKBH3発現抑制時の細胞死に重要な役割を担っていることをCRISPR/Cas9システムを用いてTP53ノックアウト細胞を樹立し、ALKBH3発現抑制実験を行うことで明らかとした。本研究により、ALKBH3発現抑制によりDNAの1本鎖および2本鎖切断によるDNA障害が生じること。また、ALKBH3発現抑制時の細胞死メカニズムにTP53遺伝子が重要であり、ALKBH3を標的とした創薬はTP53遺伝子欠損を伴う非小細胞肺癌患者に有効であることを示唆することができた。

■海外派遣で得られた成果
自身のポスター発表の際に海外の他分野の先生から質問をしていただき、全く違う観点からの新しいヒントを得ることができた。また、多くの著名な研究者の発表を聞き、いままで存在していたら使いたいと思っていたような手法が現実のものになりつつあることを知り、今の細胞生物学でホットな研究分野の話を聞くことできた。その上、いままで知らなかった研究分野が想像よりはるかにあること、また一見不可能そうなこともアイデアで乗り越える実行力が重要であると実感した。中でももっとも、興味深かった研究はノンコーディングRNAが組織間をアクチンによって運搬されているという研究である。RNAを研究している自身この発想は全く考えたことがなくすごく面白いと感じた。また、交流の場ではいろいろな国の研究者とお話ができ、普段の研究スタイル等を聞くことができ、さまざまな価値観が存在することを改めて感じた。得られたものは多くあるが、同時に初めての国際学会参加にあたり、発表をするためのポスター作成から実際の発表を通して研究を英語のみで伝えることの難しさを実感し、英語能力の向上が世界の場で活躍するためには必須であることを痛感した。このような機会をくださった今回の派遣に深く感謝いたします。

田中 翔大
臨床薬効解析学分野
博士後期課程2年(当時)
アメリカ・アナハイム
平成29年11月11日~平成29年11月15日
■目的
国際学会"American Heart Association Scientific Session 2017"において、研究成果を発表する。併せて、他の演者の発表を見聞することで、自身の知見を広める。

■発表論文あるいは共同研究の題目と概要
【題目】Myofibroblast-specific Deletion of Runx2 Improves Systolic Function and Survival in Late Phase of Cardiac Remodeling after Myocardial Infarction.

【概要】心筋梗塞(MI)をはじめとする心血管疾患は、先進諸国における代表的な死因の一つである。一方、日本で行われた臨床研究で、心不全の病態形成に転写因子Runx2が関わる可能性が示された。しかし、心不全の形成におけるRunx2の働きについては明らかにされていない。そこで、MIによる心不全形成において、Runx2が担う役割を明らかにすることを目的に検討を行った。まず、成体マウスについて、心臓の左前下行枝を糸で結紮することでMIの病態を再現し、心臓におけるRunx2の発現変化を調べたところ、心臓の線維化に関わる筋線維芽細胞で高発現していることが明らかになった。次に、筋線維芽細胞特異的Runx2欠損(CKO)マウスを作製し、MI負荷後の表現型を同腹のコントロール(CNT)マウスと比較した。その結果、MI負荷後2週間目から6週間目にかけての死亡率は、CNTマウスよりもCKOマウスの方が有意に低かった。また、MI負荷後4週間目の時点で、CNTマウスと比較してCKOマウスでは心収縮力の低下が有意に改善された。以上の結果より、MIにより増加する、筋線維芽細胞のRunx2は亜急性期の心病態を悪化させる可能性が示された。

■海外派遣で得られた成果
私はポスターセッションの発表を行った。1時間半ほどポスターの前におり、7~8人ほどの方とディスカッションを行った。多くの方に研究内容を見ていただき、質問をいただいたことで、私の研究は意義のあるもであるという自信がつくとともに、研究に対するモチベーションが向上した。また、本研究を論文化を目指すにあたり、どのような検討を行っていけばよいのかについて、具体的な指針を見出すことができた。さらに1人イギリスの研究者の方が、私の研究内容に強い興味を持たれたらしく、連絡先を交換することができた。このコネクションが今後研究を進めていく上での一助になれば幸いである。  また、自分の発表時間以外では、オーラルセッションとポスターセッションの発表を見聞した。特に、ポスターセッションでは他国の研究者に質問をすることを心掛けた。私が知らない実験方法について詳しく聞くことができ、研究を進める上で大変参考になった。  本学会で様々な海外の研究者の方とディスカッションを行うなかで、英語によるコミュニケーションの難しさを感じた。本学会を通じて、国際的に活躍できる研究者になるために、さらに研究に励むとともに、英語の能力の向上に努める必要があると感じることができたことは、とても大きな収穫であったと思う。

芳賀 優弥
毒性学分野
博士前期過程2年(当時)
アメリカ・ハリウッド
2017年10月6日~2017年10月12日
■目的
AACRが主催する乳癌に焦点を絞った学会に参加させていただくことで、発表・意見交換することで、今後の研究の進め方についてご助言・ご指摘を賜る。また、自らの研究を発表するだけでなく、著名な研究者の講演から乳癌研究における最新の知見を得ることが目的である。

■発表論文あるいは共同研究の題目と概要
【題目】Dasatinib shows different cytotoxicity in triple negative breast cancer cell lines

【概要】乳がんのサブタイプのひとつであるTriple Negative Breast Cancer(TNBC)症例は、抗がん剤が主たる治療法となっているものの、副作用が強いこと、そのうえ、概して予後が悪く、早期に再発しやすいことが知られている。さらに昨今では、副作用の少ない分子標的医薬の適応拡大が試みられているものの、高い奏効率は得られていない。このような背景のもと、TNBC患者の中でも、薬剤に対する治療反応性や、遺伝子プロファイルが異なることが指摘されており、TNBC患者全てを同一に扱うことを疑問視する声も多い。従って、TNBCの薬物の治療反応性に基づく細分類化が、TNBC の複雑な分子病態の理解を通し゛た、TNBCに対する新規治療法の開発に貢献し得るものと考えられる。そこで本検討では、過去に TNBC 全体を対象とした臨床試験か゛組まれたものの、適応に至らなかった慢性骨髄性白血病に対する分子標的医薬であるタ゛サチニフ゛に関して、TNBCの分子病態解明の一環として、複数種のTNBC細胞株に対する治療反応性の違いと、標的分子であるSrcの発現を解析した。すると、TNBCサブタイプ間でダサチニブに対する細胞障害性に差が認められ、分子病態の違いが薬効に関与していることが示唆された。標的分子であるSrcを始めとする、癌関連分子、受容体の発現を解析した。すると、細胞ごとにSrcの発現状況が異なることが明らかとなり、細胞障害性のプロファイルと照らし合わせると、TNBCの中でも、標的分子であるSrcの発現が認められるにも関わらず、ダサチニブに抵抗性を示す細胞株が存在することが示唆された。そこで現在、Srcの下流分子であるAktの活性化等を指標に、ダサチニブに抵抗性を示した原因について追究している。

■海外派遣で得られた成果
今回、AACRの主催する乳癌に焦点を絞った学会に参加し、ポスター発表においては、多くの研究者に足を止めて頂き、これからの研究に繋がる意見を多数頂いた。自らの研究に関して、貴重な意見を頂けただけでなく、各国の著名な研究者の講演から、現在の研究の潮流を学ぶことができた。研究手法や注目を集める分子や薬剤など、現在の乳癌研究において、最新の知見を得ることができ、大変有意義であった。 さらに、レセプションやポスター発表を通じて、英語による議論を重ね、自信をつけることができたと同時に、自らの英語力向上の必要性を再認識させられる機会が多くあった。しかし、多くの研究者と連絡先を交換させて頂き、日本だけでなく、世界の研究者との繋がりも今回の海外派遣で得られた成果である。 これらの貴重な経験を、今後の研究に最大限生かしていけるよう、精進していきたい。
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