食と環境の安全安心を担う薬学人材養成教育

- 統合型教育体制の整備による食と環境の安全・安心を確保できる環境薬学領域の人材育成 -

平成20年度 質の高い大学教育推進プログラム

 

取組概要

 大学教育の大きな使命は、社会的ニーズに対応できる人材養成にある。薬学には『人類の健康の維持・増進に広く貢献できる人材の養成』が求められており、こういったニーズに応える人材養成を達成するためには、薬物治療を中心とした医療薬学教育と同時に、予防薬学、いわゆる衛生化学や公衆衛生学といった“環境薬学教育”の充実が非常に重要である。例えば、最近輸入食品や食材の有害物質や病原微生物による汚染が問題になっており、また、新興・再興感染症の脅威や院内感染による重症患者数の拡大も懸念される。さらに、内分泌かく乱物質による生活環境の汚染も今後も厳しく監視する必要がある。年々高まる国民の健康への関心は、単にがんなどの疾病治療や生活習慣病の予防に留まらず、こういった食や環境の汚染による健康被害にまで広がりつつあり、これらの安全・安心を確保するための対策が強く望まれている。

 国民のニーズである食と環境の安全・安心を確保し、健全な生活を保証するためには、衛生化学や公衆衛生学、さらには最新の分析化学を基盤とした“高度なリスクマネージメント”を実施する体制を整備・充実することによって、健康被害を引き起こす様々な危険因子を未然に察知し、これを排除する有効な対策を講じる必要がある。したがって、今後の薬学教育においてはこういった“高度なリスクマネージメント”を担うことができる人材、すなわち、“環境薬学領域における高い課題探究能力・問題解決能力と優れた実践的技能を持つ薬学研究者及び薬剤師”の養成が求められる。

 大阪大学では、環境薬学を薬学の重要な教育研究領域と位置付け、平成4年に大学院独立専攻として「環境生物薬学専攻」を設置し、また平成10年の大学院重点化ではこれを「生命情報環境科学専攻」に改組・発展させることにより、他大学に先んじて環境薬学教育研究体制の整備を図ってきた。

 そこで本取組では、こういった大阪大学における充実した環境薬学教育研究体制を基盤として、上記のような社会的ニーズに対応できる人材養成を達成するために、下記のような学部における領域別統合型教育体制を構築し、これを基盤として環境薬学教育の高度化及び実質化を図るプログラムを実施する。

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 本取組で実施する教育改革は、以下の通りである。

(1)領域別統合型教育体制の構築

  1) 講義・演習・実習の再編成による領域別統合教育システムの確立

  2) 各統合領域におけるシラバスの整備及びテキストの作成

  3) 成績評価の明確化

(2)環境薬学教育の高度化及び実質化を図るプログラムの実施

  1) PBL (problem-based learning)チュートリアル教育の導入

  2) 外部講師による最新の専門教育の実施

  3) 最新機器を使用した分析実習の実施

  4) 外部関連機関と連携した体験型学習の実施

 まず、統合型教育体制を構築することにより、学生の学習に対するモチベーションを向上させることが可能となり、学部教育全体において高い教育効果が期待できる。次に、この教育体制を基盤として、環境薬学教育の高度化及び実質化を図ることにより、学生の課題探究能力や問題解決能力、さらには社会的ニーズに応えるための使命感の涵養と、関連分野・部門の最前線で活躍するために必要な実践的技能の修得を目指す。

 本取組は、環境薬学領域研究室の教員とカリキュラム検討小委員会委員を中心に構成される質の高い大学教育推進GP運営委員会(以下、運営委員会)により企画・運営を行い、「統合型教育体制」については、薬学研究科全教員が参画することにより構築を進め、また「環境薬学教育の高度化及び実質化を図るプログラム」については、環境薬学領域研究室の教員及び本プログラムで採用した特任教員が中心となって実施する。

 本取組の対象は、平成20年度に入学した薬科学科(4年制・64名)と薬学科(6年制・26名)とし、学年進行に合わせて3年間実施する。また、得られた成果については、平成22年度以降に入学した学生に対して提供し、その教育効果の検証を行う。また、取組実績については各年度末に作成する報告書によって公開し、これをもとに有識者による外部評価を実施する。さらに、学生による評価及び教員による自己評価を行ない、これらの評価結果をもとに、運営委員会の主導により、本取組における教育プログラムのさらなる改善を図る。なお、本取組は補助が終了する平成23年度以降も継続して実施し、さらに教育効果向上に向けた改善を行なうことによって、薬学部教育における発展的な定着化を図る。