【報告】静岡県薬事研修プログラム報告

2018.01.18

報告者:
所属:静岡県⽴⼤学 教授 橋本博

研修先:
静岡県薬事課、静岡県環境衛⽣科学研究所、株式会社ツムラ静岡⼯場、中外製薬⼯業株式会社藤枝⼯場、三菱フードテック株式会社冨⼠⼯場

概要:
静岡県薬事課の協⼒により、多くの製薬関連⼯場がある静岡県の特徴を活かしたレギュラトリーサイエンスに関する研修プログラムを実施した。
本プログラムには静岡県⽴⼤学から2名、岐⾩薬科⼤学から2名の学⽣が参加した。プログラムの概要を以下に記す。
研修1⽇⽬および2⽇⽬は、静岡県薬事課において静岡県の薬事監視体制、医薬品医療機器等の法律、GQP、GVP、GMP に関する講義によって基礎的な知識を習得した。研修3⽇⽬は、県内の医薬品製造⼯場(株式会社ツムラ静岡⼯場、中外製薬⼯業藤枝⼯場)を⾒学した。研修4⽇⽬は、静岡県環境衛⽣科学研究所において医薬品の試験検査に関する基礎的な知識を習得し、各種測定法のデモンストレーションを⾒学・体験した。研修5⽇⽬および6⽇⽬は、薬事機動班と共に医薬品等の製造⼯場(三菱フードテック株式会社富⼠⼯場)に赴き、機動班の薬事監視業務を⾒学した。
研修7⽇⽬は静岡県薬事課において、研修内容をまとめたレポートの作成、発表、総合討論を⾏った。
静岡県には多くの医薬品等製造事業所がある。このような地域の特徴を活かし、レギュラトリーサイエンスを基盤とした医薬品の開発・製造における薬剤師の職能を学び・体験することが出来たと思う。本プログラムによって、薬学⽣が薬剤師の社会的責任を認識し、薬の専⾨家として国⺠の健康な⽣活を守る使命感・責任感・倫理観の涵養が期待できる。

参加学生の感想:
今回の学生自主学修プログラムでは、医薬品製造における医薬品医療機器等法やGMPなどの医薬品製造における関連法規について講義を受けるだけでなく薬事監視機動班の方々に同行しての調査の他、製造している現場に行き実際の製造ラインを見学しどのように医薬品が作られているのか、また環境衛生科学研究所での市場に出た製品の調査など様々なことについて勉強することが出来ました。学校での講義などで例えば、「GMPはこういったものでこういった基準だ。」というような法規の概略的な部分に関しては聞いたことがありました。しかし、関連法規の記載の表していることや、大量の製品を品目によっては24 時間製造し続ける実際の現場においてどのように製品の品質を適切な水準に維持していくかの取り組みの部分に関してなどは良く知りませんでした。
今回の研修に参加して例えば、医薬品や医薬部外品、化粧品それぞれの定義や承認の他、表示に関するルールなどがあること、製造業や製造販売業を行うために必要な許可や体制がどういったものであるか、工場レベルでの基準を満たすための設備や取り組み、GMP適合性調査などをするにあたってPIC/Sに準拠した調査の一連の流れや必要とされる調査員の資質など様々なことを知り、医薬品等の製造には非常に細分化されたルールがあり、関連する人すべてがこれを守ることで品質の担保された製品が市場に出ていると実感することができました。現場での査察では製造工程の温度管理や機器点検の頻度だけではなく品質管理の検査に使用する機器の校正法や実際の製造工程以外の会議や調査についてもきちんと手順書を作成して問題が起こった時にどのようにするかといった非常に細かいところまで確認していて、ここまで徹底して調査を行うということに驚きました。昨今の日本の製造業における不正が明るみになっている状況からも製品を購入する消費者の方々が安心して使用できる環境を守るために今回見学させていただいた行政による査察や品質調査といった業務が改めて大変重要であると感じました。今回の研修のように製造所に出向いて実情を学ぶという機会はほとんどないため今回参加して非常に有意義であったと考えています。
今回の研修は7日間と非常に長いものであり、薬事課の皆様を始めとして関わってくださった方々には通常の業務に加えて日程の調整や実地への同行、講義による指導など様々な面でご助力いただきました。今回の研修で学んだことを今後に生かしていきたいと思います。お忙しい中、誠にありがとうございました。

私は日頃より、行政に関わる薬剤師の在り方とその業務について興味がありました。病院や薬局については実務実習などを通して業務などを学ぶ機会はありますが、行政に関する仕事を経験・見学できる機会はあまりありません。したがって今回の研修は自分の将来を見据える上でも非常に有益になると考え、参加させていただきました。
今回のプログラムでは、医薬品製造に関わる法律などの基礎的な座学から、機動班の製造所調査同行といった幅広く、濃密な内容を学ぶことができました。
医薬製造に関する法律などは大学でも学びますが、教科書など書面のみでの学習であるため、内容的に繋がりが見えず、具体的なイメージができていませんでした。しかし今回の研修を通して、患者に医薬品を、より安全かつ高い品質で届けるために、様々な場面で、様々な人々が尽力しているという事実を肌で感じることができました。その中でも特に、法律の重要性と、それを遵守する企業側、それを監視する行政側、この双方の考えや努力を学ぶことができました。
企業側は、より良い製品を作るために法律を遵守するのはもちろんのこと、更なる高みを目指して、試行錯誤をしておりました。ITなどで用いることで作業の効率化、汚染防止などに努めており、また、ツムラさんでは生薬の原料を作る農業の段階から関与して高い品質を求めており、中外製薬さんでは自社で発電して環境への負荷を少しでも減らそうという試みもなされていました。こういった取り組みはあまり明るみに出ることがないため、今回のような研修を通して初めて知ることができました。
行政側も、患者に、より安全な医薬品を届けるために様々な思考を巡らせていました。法律が遵守されているかを監視する立場の行政は、製造の現状を細部まで見ることができる数少ない機関であるため、求められる知識や技能は高く、並大抵の努力ではなし得ないと感じました。
今回の研修で見学・経験させていただいたことを、医薬品を使用する立場の医療従事者や患者が知る機会は少なく、実際に私も詳しく知りませんでした。しかし、今回の研修を通して、医薬品を使用する前段階から様々な人の努力や考えが絡まりあっているという現状を知ることができました。
この度はご多忙の中、本研修のために、多くの方々にお時間を割いて頂き、本当にありがとうございました。今後はこの経験を生かし、医薬品を介して地域に貢献できるような人材になることを目標に、様々なことに取り組んでいきたいと思います。

今回の研修プログラムに参加して、非常に多くのことを学ぶことができたと思います。行政での薬剤師の役割や仕事については、知る機会が少なく、具体的なことはほとんど知りませんでした。行政での薬剤師の仕事を学ぶとても良い機会でした。
初めの2日は、医薬品製造所調査に必要な知識の習得として、薬機法やGMPのことなどを講義していただきました。講義では、大学では詳しく学んでこなかった言葉だけ知っているようなことについて詳しく学ぶことができ、とても勉強になりました。また、医薬品製造所の調査に行くために必要な知識の膨大さに驚きました。
3日目の午前はツムラさんの工場見学をさせていただきました。ツムラさんは漢方製剤を製造されているとの事で、他の医薬品工場とは違った特殊な面を見る事ができました。特に印象的だったことは、造粒包装棟の中ではほとんどの作業をロボットが行 っていることでした。無人フォークシステムや小型搬送ロボット、多関節ロボットなどそれぞれが適所で作業しており、自動化の進み具合に驚きました。
午後は中外製薬工業さんの工場見学をさせていただきました。中外製薬工業さんでは、ツムラさんとは異なる、医薬品の製造現場について学ぶことができました。特に少量でも有効性を示す高活性物質への対策は、作業者の労働安全性を向上させるために2重のバリアがあり、作業者が働きやすいような環境を作られていました。排熱を空調などに利用したり、洗浄水などの排水の水質をモニタリングしていたりと環境のことを考えていることに工場のあり方を改めて考えさせられました。
2つ工場見学では、共通して衛生面の管理の厳しさを感じさせられました。作業工程のインライン化をはじめ、衛生面に特に力を入れており、いかに医薬品の製造で求められることが厳しいかを目で見る事ができました。また、製造工程の自動化が非常に進んでいてとても驚きました。製造所にはほとんど人がおらず、今後の有人作業ありかた、ロボットに負けない人材について考える機会にもなったと思います。
4日目は、環境衛生科学研究所の見学をさせていただきました。環衛研では、実際にどのような検査や研究をやっているのか、機械などの校正についてなどを学ぶことができました。大学で普段やっているような機械の使い方とは全く違い、重さ1 つ量るのでさえ、校正をしたり手順どおり行っていることを確認したりととても精密に行われていました。公的な機関として結果に責任を持つことの大変さを改めて感じました。
5日目、6日目は、薬事監視機動班の調査に同行させていただきました。プラントツアーでは、現場の方の説明を聞いて、製造工程の詳しい部分や、温度管理、機器の校正などについて疑問に思うこと、品質管理の上で重要なことなど、非常に多くの質問をされていました。説明では専門用語が多くでてきていましたが、機動班の方は理解されているようで、質問もスムーズにされていて、事前資料をよく読み込んでいる様子でした。書面調査では、膨大な書類を矛盾がないか、記載漏れがないかなどを調査されていました。
この研修では、行政で働く薬剤師として、さまざまな職種を見学させていただきました。行政での薬剤師の仕事に対する私のイメージとはまったく違うものでした。研究や実験をされている方、工場などに行き調査をする方、他にも多岐にわたる業務があり、とても興味深く感じました。行政での薬剤師の活躍を見る事ができ、多くのことを学ぶことのできた、とても充実した日々を過ごせたと思います。
最後になりましたが、7日間お忙しい中研修のためにお時間をさいていただいて、ありがとうございました。この研修で得られたことは、今後に活かしていこうと思います。

今回本研修に参加し、普段はなかなか目にすることのできない、行政で働く薬剤師の業務内容について学ぶことができた。
研修1日目は別館8階第5講義室にて、静岡県の薬事監視体制、医薬品医療機器等法の基礎などについての講義をしていただいた。
静岡県の薬事課は薬事企画班、薬事審査班、薬物対策班から構成されており、それらのうち薬事審査班が医薬品製造販売業等許認可、監視指導等を行っている。今回は主に薬事審査班の業務内容について学んだ。薬事審査班の業務のうちの一つにGMP適合性調査というものがある。GMP調査要領に示されている品質マニュアル、実施に関する手順書に基づき、医薬品が適切に製造され、試験され、市場に提供されているかを調査するものである。この調査により適切な指導・指摘を行うことで、県民はたまた国民への安全な医薬品の供給に貢献している。
研修2日目は、製造販売業GQP省令・GVP省令、GMP初級講座、適合性調査で見るGMP、について講義をしていただいた。
製造販売業者は、総括製造販売責任者の総括のもと、品質保証部門と安全管理統括部門を置いている。品質保証部門はGQP省令に沿って製造業者の製造監視及び製造販売後の品質管理を行っており、安全管理統括部門はGVP省令に沿って製造販売後安全管理を行っている。GQP省令とは、製造販売業の許可要件として、製品の品質管理の方法を定めた厚生労働省令であり、品質標準書、品質管理業務の手順に関する文書、市場への出荷の管理、などについて示されている。一方GVP省令とは、製造販売業の許可要件として、製品の製造販売後安全管理の方法を定めた厚生労働省令であり、安全管理責任者の業務、安全管理情報の収集、安全確保措置の実施、などについて示されている。GMP初級講座ではPIC/Sについても学んだ。PIC/Sとは査察当局間の非公式な協力の枠組みであり、医薬品分野での調和されたGMP基準及び査察当局の品質システムの国際的な開発・実施・保守を目標としている。
研修3日目は、株式会社ツムラ静岡工場及び中外製薬工業株式会社藤枝工場の視察に訪れた。
株式会社ツムラでは、まず会社及び静岡工場の概要が説明され、続いて工場見学を行った。ツムラは現在静岡のほかに茨城、上海、深圳に工場を持っている。静岡工場はマザーファクトリーとして少量多品種の製品の生産を担っているのに対し、茨城工場では少品種を大量生産しているという特徴がある。これら2工場はツムラが生産する129 処方のうち、一部を除き別品目を分担して生産している。129 品目にはそれぞれ番号が振られており、順番に特に規則性はなく、語呂合わせで不吉とされる番号(42番など)は振られておらず飛び番となっている。造粒包装棟の見学では最新鋭の生産技術を見ることができた。無人フォークシステムは効率的な収納を実現し、搬送ロボットは人件費の削減、クリーンルームの汚染防止(人間は最大の汚染源)に貢献している。また、原薬の投入、段ボール詰めには多関節ロボットが活躍していた。
中外製薬工業でも同様に会社概要の説明を受け、工場見学を行った。訪れた藤枝工場は合成原薬の製造から製剤、包装までの一貫体制が整う基幹工場として稼働している。中外製薬工業では高活性物質も扱うため、作業者の被ばく対策に力を入れていた。
グローブボックスを使用した作業、気圧の調整(装置から出さない、出たとしても部屋の外には出さない)など様々な工夫がなされていた。また、生産ラインの機械化、自動化が進んでおり、IT部門も設立し力を入れているそうだ。実現可能かは別にして、最終的には無人化を実現し生産コストが削減できるのが理想ではあるとのことであった。
研修4日目は、静岡県環境衛生科学研究所を訪れ、医薬品の試験検査に関する講義及び各種測定法の説明、デモンストレーションを行っていただいた。
環境衛生科学研究所では、製薬会社が製造した医薬品をサンプリングし、国や県が承認した出荷基準と検査方法で検査を行っている。検査の実施に際し行われる検査項目表及び検査手順の作成は、検査結果の信頼性確保のために大きく貢献している。また、「4つのM」と言われるMaterial;モノ(サンプル及び試薬の管理)、Machine;機器(分析機器等の点検)、Method;検査方法(適切な検査の実施)、Man;ヒト(計画的な教育訓練)、に焦点を当て取り組むことにより、検査結果の信頼性確保に努めている。
ラボツアーでは、医薬品の試験検査の際の自主点検や業者による点検の話を聞くことができ、また試験検査を実際に目にすることができ、検査結果の信頼性を確保する大変さと重要性について学ぶことができた。
研修5日目6日目は、薬事監視機動班の調査に同行し、三菱商事フードテック株式会社を訪れた。
今回はプラントツアーによる査察、書面による調査を行った。機動班の調査員は、プラントツアーでは設備などに問題点が見られないかの確認を行い、書面調査では品質を保証するために適切な管理が行われているかの調査を行っていた。
今回の研修を通して、行政で働く薬剤師が行う薬事審査などの業務について学ぶことができた。特に第一機動班に同行し三菱商事フードテックを訪れた際には、査察の様子や書面による調査を実際に目にすることができ、医薬品の品質を保証するためにこれほど細かいデータや記録の管理を行っているのか、さらにそのような調査がいるのかと驚いた。また、ツムラ、中外製薬工業を訪れた際には最新鋭の機器やロボットも目にすることができ、また、工場の取り組みなども聞くことができ、大変貴重な経験をすることができた。今まで行政職について興味をもって自ら調べるということがなく、行政で働く薬剤師についてほとんど知らなかったが、今回一部ではあるかもしれないが学ぶことができ、大変勉強になり、興味も湧いた。これから将来の職業を選択するにあたり、この経験をぜひ生かしたいと思う。

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