研究内容   









   薬を用いて病気を治療する薬物治療は医療の中で大きな部分を占めています。当分野は、
  中枢神経系疾患の薬物治療に貢献する動物レベルでの基礎的研究を行っています。主なもの
  としては(1)神経精神疾患治療薬に関する研究 (2)環境要因に対する生体応答の分子基
  盤解明に関する研究です。
 
   神経精神疾患治療薬に関する研究は、臨床現場での情報に基づいた基盤研究で、臨床にお
  ける治療戦略に貢献することを目指しています。
  ひとつの成果として、治療抵抗性うつ病に対するフルボキサミンとスルピリド併用の神経化
  学的基盤を解明しました(Neuropsychopharmacology, 2005)。また、アルツハイマー病、
  認知症、注意欠陥多動症(ADHD)などの治療薬の新しい作用機構の解明や、薬物作用の差別
  化の解明を通して治療戦略に貢献することを目指しています。

   環境要因に関する研究では、精神疾患発症における遺伝子・環境要因相互作用に着目した
  研究をしています。精神疾患の発症は遺伝的要因だけでなく環境要因によっても影響を受け
  ると考えられていますが、当分野ではPACAP(Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)
  遺伝子欠損マウスの異常行動が発育期の環境要因により影響を受けることを明らかにしました
  (Behav Brain Res, 2010)。
  このことは、遺伝子改変動物の異常な表現型が環境要因に依存していること、すなわち脳機
  能発達における発育期環境要因の重要性を示しています。このような背景において、環境要
  因による脳機能変化を捉え、その分子基盤の解明から新しい創薬標的分子の探索を目指して
  います(図1)。
   
環境因子と遺伝因子の相互作用
図1.環境因子の活用による創薬標的分子の探索
   
   本研究の一環として、個体間相互作用による行動異常と脳機能変化のリアルタイム評価系
  の構築に成功しました(図2)。異常行動の一つである攻撃行動や社会性行動異常は他のマ
  ウスとの相互作用により誘発されます。当分野では、このマウス間相互作用を一過性の環境
  要因と捉えマウス間相互作用の面から脳機能変化を行動学的、神経化学的に追究し、神経精
  神疾患病態モデルマウスの脳内神経ネットワーク異常の解明とその創薬への応用を目指して
  います。
   
マウス個体間相互作用の評価
図2.マウス個体間相互作用の評価系
   
   
  【研究課題】
 1) 抗不安薬、抗うつ薬、アルツハイマー病治療薬、ADHD治療薬などの作用機構に関する研究
 2) 環境因子の脳機能に及ぼす影響に関する研究
 3) 個体間相互作用による神経精神疾患病態モデル動物の脳内神経ネットワーク異常に関する研究
 4) 薬物標的分子としての神経系Na+/Ca2+交換系に関する研究