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活性天然物の合成研究とリード化合物創製

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概要


  探索研究により見いだされる活性物質の多くはごく微量であり、医薬品への展開を見据えた場合、有機合成による化合物の供給が必要となります。私たちは、最新の有機合成化学を利用して、研究室で見いだした活性物質の全合成研究を行っています。また、それら活性天然物を基盤とした実用的な医薬リード化合物を見いだすべく、一部構造を改変した化合物の合成研究によって得られる構造活性相関の知見をもとにして、活性を保持しつつ、容易に大量合成が可能な構造単純化アナログの創製研究も進めています。

<血管新生阻害物質bastadin 6の合成研究>

 血管新生において中心的な役割を担っている血管内皮細胞の増殖を選択的に阻害する化合物として、インドネシア産海綿Ianthella bastaから、大環状ブロモチロシン誘導体bastadin 6を見いだしています。本化合物の効率的な合成を目指して検討した結果、硝酸アンモニウムセリウム(CAN)を用いる2,6-ジブロモフェノール類の新規な酸化的カップリング反応を見いだし、これを用いた収束的な合成法の開発に成功しました。また、これを利用して、活性発現への寄与が示唆されるブロモ基やオキシム基を種々の官能基に変換したアナログ化合物を合成し、構造活性相関に関する様々な知見を得ることができました。

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<Cortistatin Aの合成研究>

 インドネシア産海綿Corticium simplexから発見したステロイドアルカロイドcortistatin類は、非常に強力かつ高選択的に血管内皮細胞の増殖を阻害することから、次世代の新しい抗ガン剤のリード化合物として、非常に期待される化合物です。
 しかし、cortistatin類は海綿からごく微量しか得られないため、医薬シーズへの展開には有機合成による供給が不可欠です。Cortistatin Aは、その特徴的な化学構造と顕著な生物活性から多くの合成化学者の興味を引き、世界中で全合成研究が活発に展開されていますが、私たちも、独自のルートによるcortistatin Aの全合成研究を行ってきており、最近、分子内Heck反応とoxy-Michael反応を鍵工程とする、cortistatin Aの主炭素骨格の合成に成功しています。

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  いっぽうで、cortistatin Aの複雑な骨格構築には多工程を要することから、天然物そのものの有機合成による供給はやはり容易ではありません。そこで私たちは、医薬シーズとしての展開を指向した活性リード化合物の創製研究を行っています。海綿の抽出エキスより単離したcortistatin類縁体の構造活性相関を解析した結果、イソキノリン側鎖が活性発現に必須の官能基である一方、母核のA環部分の官能基についてはそれほど重要ではないことが示唆されました。
  構造活性相関の知見をふまえて、分子全体の三次元構造は天然物を模倣しつつ、母核部分を単純化し、比較的短工程で合成可能な活性リード化合物の創製を目指した検討を行った結果、最近、天然物に匹敵する活性を有する化合物を見いだすことに成功し、in vivoで抗腫瘍活性を示すことも明らかにしております。

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 現在、さらに強力な活性を示す、実用的な抗がんリード化合物の開発を続けるとともに、より合理的な化合物設計を行うため、いまだ未解明であるcortistatin Aの標的タンパク質の同定に向けたケミカルバイオロジー研究も進めております。


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<Furospinosulin-1の合成研究>

  私たちは、低酸素環境選択的ながん細胞増殖阻害物質として見いだしたfurospinosuilin-1が腫瘍移植モデルマウスに対して経口投与で顕著な抗腫瘍活性を示すことから、医薬シーズとしての展開を指向した合成研究を行っています。簡便かつ短工程での合成ルートを確立できたので、各種アナログ化合物を合成し構造活性相関を解析した結果、わずかな構造変換でも活性が大幅に減弱することから、分子全体の構造が活性発現に重要であることを明らかにしています。唯一、天然物と比較して高濃度でも通常培養条件における毒性が低く、かつ低濃度でより強力な低酸素環境選択的増殖阻害活性を示すアナログ化合物としてdesmethyl体を見いだし、in vivo抗腫瘍活性も確認しています。
 さらに検討を進めた結果、ごく最近、天然物よりも強力な活性を示す化合物の合成にも成功しており、製薬企業と共同で医薬リード化合物への展開を検討しています。

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