大阪大学 大学院薬学研究科 薬剤学分野

  • アクセス
  • リンク

研究内容

薬剤学は、薬物の効果を最大限に発揮し、副作用発現を出来るだけ抑え、患者さんに投与できる「医薬品」に形態を整える製剤研究や薬物の有効性と安全性を司る体内動態(吸収、分布、代謝、排泄)研究、並びにその体内動態制御を目指して最適な投与形態や投与方法を設定し、薬物治療の最適化を図るDrug Delivery System;DDS研究など、薬物治療の原理・原則を考究する学問分野です。この中で私達は「薬物を必要な時に、必要な場所で、必要な量だけ作用させる」ことで、副作用を少なく治療効果を最大化しようとするDDS研究を行っています。また私達の研究室では、薬学研究科の付属創薬センターに設けられた創薬基盤技術開発ユニットにおいて、次世代食品開発学プロジェクトを展開しており、医薬品だけでなく、機能性化粧品や機能性食品の開発研究を通じてヒトの健康を総合的に科学することで豊かな社会の発展に貢献したいと考えています。

①医薬品シーズ並びに機能性食品素材の安全性・有効性評価と体内動態解析

 難溶性薬物の消化管吸収を向上させる一番の方法として、薬物の溶解性改善が挙げられます。薬物が消化管から吸収されるためには、まず薬物が溶解する必要があります。難溶性薬物の溶解性を向上させる方法として、微細化による個体表面積の拡大、界面活性剤や包接化合物などの溶解補助剤の利用、溶媒和物や結晶多形、非晶質の利用などが研究されてきました。非晶質とは、明確な規則性を持たずに分子・原子が集合した個体状態であり、結晶のような長距離秩序はありませんが、短距離秩序はある物質の状態を言います。非晶質は、一般的に結晶に比べて高い溶解度と速やかな溶出が得られることが知られています。 私達は、難溶性の医薬品並びに有用天然物を独自の手法により非晶質状態の一種であるガラス状態にすることで溶解性の改善を図り、吸収特性を含めた体内動態解析を通じて安全性、有効性を担保するためのDDS研究を行っています。

医薬品シーズ並びに次世代保健機能材料の研究開発

②経皮吸収型製剤の最適化・実用化における技術開発

 皮膚の最外層を構成している角質層は、外界からの異物侵入を防ぐ物理的バリアとして機能しているため、皮膚からの薬物吸収は大きく制限されており、どの様な薬物でも経皮吸収型製剤として開発できる訳ではありません。これまで薬物の経皮吸収効率を改善する方法としてエレクトロポレーション法やイオントフォレシス法、ソノフォレシス法など様々な経皮薬物デリバリー法が考案されてきました。その一つにマイクロニードル法があります。マイクロニードルは、マイクロメートルサイズの微小針を用いて角質層に微小孔をあけることで、薬物の経皮送達効率を向上させる技術です。私達は、このマイクロニードルとハイドロゲルパッチを用いて、高分子物質をも効率良く経皮吸収させるためのDDS研究を行っています。

経皮吸収型製剤の最適化・実用化におけるDDS研究

③中枢神経疾患・代謝性疾患の新たな予防法・治療法の開発

 アルツハイマー病をはじめとする認知症、パーキンソン病、精神疾患、発達障害などの脳・神経系疾患はアンメットメディカルニーズ(いまだ有効な治療方法がなく、満たされていない医療ニーズ)が高い領域です。これらの発症や治療・寛解機構は依然として解明されていません。私達の研究室では、特に中枢神経系疾患・精神疾患関連領域において、標的となる分子の選択的リガンドを用いた急性・亜急性の機能変異解析、そして遺伝子改変動物を用いた分子の長期的な機能変異解析を通じて、主に行動薬理学的・神経化学的・薬物動態学的視点から、特定標的分子の生理病態的役割の解明と創薬基盤研究を行っています。例えば、脳局所への薬物投与や、脳微小透析法とHPLC/電気化学検出器を組み合わせたラット・マウスでの精度の高い神経-神経間相互作用の解析では、脳各部位における神経伝達物質(モノアミン,アミノ酸等)やサイトカイン、ペプチドホルモンの微量測定を実現し、多くの共同研究にもつながっています。また新しい行動学的手法を複数開発・公表し、神経精神薬理学領域の発展に貢献すべく努力しています。これらの研究を通じて、治療効果不十分や抵抗性症例等のための新たな治療薬の開発に挑戦しています。

中枢神経疾患・代謝性疾患の新たな予防法・治療法の開発

④精神・神経疾患の克服に向けた脳内薬物送達技術の開発

 一般に、脳には異物侵入防御機構である血液―脳関門(Blood-brain barrier;BBB)が備わっているため、静脈内投与や経口投与による全身循環血流を介した脳への薬物送達は困難であることが知られています。分子量500以下の脂溶性低分子化合物および一部の栄養素を除き、高極性の化合物、ペプチドや核酸などの水溶性高分子化合物の脳内への移行は期待できず、BBBの存在は中枢神経系疾患に対する治療薬開発の大きな障壁となっています。私達は、中枢神経系疾患の予防・克服を目指した脳への薬物(特に生理活性ペプチド)送達技術の開発のため、マイクロバブルを利用した超音波薬物デリバリー、タイトジャンクションなどのBBBシールドに関与する分子の制御、経鼻投与による鼻腔から脳への効率的なデリバリーなどについて研究を行っています。また実際に動物の行動や神経機能への影響を評価し、in vivoでの治療効果や有害作用を薬物動態学的ならびに薬理学的観点から見極め、創薬への応用を目指しています。

精神・神経疾患の克服に向けた脳内薬物送達技術の開発

Copyright © 2018  Nakagawa Lab.  All rights reserved.