研究方針

2011"
 医薬品の殆どは有機化合物である。また、生命現象は大小様々な有機化合物が関与 する化学反応から成り立っている。生命現象を分子レベルで考察し、そこから新しい 医薬品候補化合物を創製する過程に於いて、有機化合物を扱う「有機化学」の果たす 役割は実に大きい。

 我々の研究室では、有機化学を基盤として、創薬や医療に役立つ高機能性有機化合 物の創出を目指して研究を行っている。医薬品の構造が複雑化してきた今日、標的と なる化合物の効率的合成のためには新しい合成技術や概念、触媒の創生が不可欠であ る。また、原料となる資源の有効利用、副成物による環境問題、さらには、鏡像体の 選択的不斉合成法など、未解決の課題に我々の英知を結集し、独自の方法を創造する ことにも注力している。

 具体的には、人間の英知を超えた化学構造と顕著な生物活性を有する天然有機化合 物(viridin, aloin, agelastatin A, platencinなど)の不斉全合成研究とそれらの 誘導体創製を行っている。そのために、「典型元素」、「遷移金属」、「酵素」など の特性を活かし、また潜在能力を引き出し、更にこれらを融合した新しい合成手法を 開発している。すでに「加水分解酵素リパーゼと固定化金属触媒を組み合わせた不斉 合成法」、「不安定なベンザインの反応性制御による多置換芳香族化合物の合成法」、 「高反応性ラジカル種の制御と活用を基盤とする分子骨格構築法」、「オレフィンの 位置および立体特異的ジクロロ化法」などを開発した。また、これまで殆ど前例の無 い「含フッ素芳香族化合物の合成法」や「含フッ素長鎖ポリエチレングリコールの合 成」など、創薬研究や診断薬開発に資する人工の機能性分子合成法の開発にも力を入 れている。これらの成果は何れも国際的に注目され、高い評価を得ている。 さらに、我々が合成した化合物や独自に開発した触媒・合成法を、創薬シーズ分子の 創出、医農薬の効率的製造、革新的医療へと繋げるべく、他領域の研究グループとの 共同研究を積極的に行っている。


研究課題

1. 生物活性天然化合物の全合成
2. 酵素触媒不斉合成手法の開発
3. ベンザインの反応制御と合成化学的応用
4. 高活性ラジカル種の制御と活用を基盤とする有機合成
5. 創薬や医療に資する新規機能性分子の精密有機合成


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